さくらのAI Engineで利用できるAIモデルを比較する(2026年9月版)

AI・高火力 # さくらのAI Engine

ネットアシストMSP事業部 開発チームの yu-kinjo です。

マネージドでAIモデルがAPI利用できるサービス「さくらのAI Engine」ではプレビューステータスのモデルも含めると様々なAIモデルを利用する事が出来ます。ただ、様々なモデルが有る中でどれをどう活用すればいいか、難しい部分も有ります。

今回は、2026年9月7日時点でさくらのAI Engineで利用できるAIモデルの中から、特にチャット的に利用できるAIモデルについて、どのような特徴が有るのかを調べてまとめたいと思います。

さくらのAI Engine

前提

今回は、追加の申請をすることなく利用できる2026年9月7日時点の「パブリックモデル」と「パブリックプレビューモデル」について調査を行いたいと思います(クローズドモデルは利用には申請が必要です。後述)。また、チャット的に利用できるAIモデルを対象とし、埋め込みモデルや音声系のモデルについては対象外としています。

各モデルの情報はさくらのAI Engineで公開されている情報のほか、「HuggingFace」で公開されているモデル説明を参考にしています。また、実際の挙動について curl コマンドからAPIを実行して試しています。

なお、LLMモデルに分かりやすい性能の優劣をつけることは難しく、目的の用途に応じて得られる精度が満足いくものであるか、という判断を各自で行う必要が有ります。

利用コスト

利用コストは Input(10,000トークン)あたりの価格で区分し表示しています。

  • 超低: 0.1円未満
  • 低: 0.1円以上 0.2円未満
  • 中: 0.2円以上 0.5円未満
  • 高: 0.5円以上

なお実運用では Output 側の価格差が大きく影響するケースも多いです。各モデルに入出力の実額も併記しています。

パラメータ数とは

パラメータ数には総パラメータ数とアクティブパラメータ数が有ります。

総パラメータ数はそのモデルが学習した重みの個数です。パラメータ数×精度でおおよそのメモリ消費量が決まり、これが大きいと消費するメモリ(GPU処理の場合VRAM)の量が大きくなります。

また、アクティブパラメータ数は実際に推論処理でトークンを生成する際に計算されるパラメータ数です。総パラメータ数に比べてアクティブパラメータ数が小さいモデル(MoE(Mixture of Experts)モデル )は、推論処理で消費する計算コストが小さく、結果、応答が速くなる場合や、API価格も安価になる場合が有ります。

コンテキスト長とは

そのモデルが処理できる文脈の長さのようなものです。入力時のトークン+出力時のトークン(+思考時のトークン)の合計がコンテキスト長に収まる必要があり、コンテキスト長が長いモデルほど長大な文章やコードの処理が行えるようになります。

ただし、コンテキスト長に収まっていてもコンテキストが長くなればなるほど回答精度は下がる傾向にあります。

思考とは

思考を行うモデルは思考モデルと呼ばれます(推論モデルとも。今回はLLMが行う基本的な推論との区別の為、思考と表記します)。思考モデルでは複数の段階を経て回答を検討して返すような挙動を取ります。

思考に使われる分のトークンも課金されるため、思考モデルは利用コストが膨らみやすい場合が有ります。

思考モデルによって、どの程度思考を行うか、オフにすることができるかなども異なります。それを変更するために必要な設定値名がモデルによって異なる事には注意が必要です。

クローズドモデルとは

提供元が商用利用を前提に提供するモデルで、利用には追加の申請が必要になります。また、無償利用分には含まれない点もパブリックモデルやパブリックプレビューモデルとは異なります。現在はPFN製の「PLaMo 2.0-31B(2026年10月12日 提供終了予定)」「PLaMo 3.0 Prime」、NEC製の「cotomi v3」が提供されており、国産モデルにこだわる場合はこれも選択肢に入るでしょう。

利用ライセンスの違い

オープンに提供されているモデルといっても、そのライセンスにはそれぞれ違いが有ります。今回は比較の対象外としますが、以下のページで情報が公開されています。

提供するモデルのライセンス表示 | さくらのクラウド マニュアル

パブリックモデル

gpt-oss-120b

  • 開発元: OpenAI
  • 用途: 汎用
  • 総パラメータ数: 117B
  • アクティブパラメータ数: 5.1B
  • コンテキスト長: 128K
  • マルチモーダル入力: ×
  • 思考: 〇
  • 利用コスト: 低 (Input: 0.15円 / Output: 0.75円)

さくらのAI Engineにおいては、おそらく最も利用する方が多いモデルではないでしょうか。OpenAI製で日本語も扱えるため取っ付きやすい、汎用的に利用できるモデルです。

思考モデルであり、reasoning effort の値を high, medium, low のいずれかに設定する事でどの程度思考を行うかの調整が可能です。実際にAPIを実行し、同じ質問でも high と low では総トークン数が大きく異なる(参考値: 1,768トークン, 187トークン)事を確認出来ました。

特にテキストチャット目的であれば、一旦これを試せばいいのではないか、という定番モデルです。

llm-jp-3.1-8x13b-instruct4

  • 開発元: 国立情報学研究所(NII)
  • 用途: 汎用(国産であることを重視)
  • 総パラメータ数: 73B
  • アクティブパラメータ数: 22B
  • コンテキスト長: 4K
  • マルチモーダル入力: ×
  • 思考: ×
  • 利用コスト: 低 (Input: 0.15円 / Output: 0.75円)

こちらは国産モデルとなります。モデル選択も含めて国産AIを実現したいという場合に選択が可能です。また、HuggingFace上でどのようなデータで学習が行われているかも公開されています。

こちらも汎用的に利用できますが、モデルが全く違う以上、gpt-oss-120b とはプロンプトに対する返し方の傾向が異なります。どのような具合で動作するかは利用目的に応じて確認が必要です。

特にコンテキスト長が短く、RAGや長文要約などの用途には使いづらい場面が有るでしょう。

パブリックプレビューモデル

パブリックプレビューモデルはさくらのAI Engine公式より

パブリックプレビューモデルはユーザーの皆様に実際の利用環境での動作検証およびフィードバックの収集を目的とした提供となり、予告なく提供を終了する場合があります。提供期間中も安定性や応答品質について保証するものではなく、動作や仕様が変更となる可能性があります。パブリックプレビュー終了後、継続して提供する際には料金が変更になる場合があります。

と案内されています。その点に注意し利用する必要が有ります。実際に、以前提供されていた「Kimi-K2.5」モデルでは提供が一時停止されたケースが有ります。

【さくらのAI Engine】「Kimi-K2.5」の提供一時中断のお知らせ | さくらのクラウドニュース

また、先述の Kimi-K2.5 がそうであるように、実際に提供が終了したモデルも複数有ります。提供状況の動向を確認しながら利用する必要がある事に注意しましょう。

さらに、実際に動作検証するうえで分かったパブリックプレビューモデルの注意点として、思考モデルの有効/無効 切り替え方法はさくらのAI Engine側でのドキュメントには記載されていないようです。また、思考モデル同士であっても思考に使ったトークン数が reasoning_tokens として表示されるモデルとされないモデルが有ります(gpt-oss-120b と gemma-4-31B-it では表示され、Qwen3.6-35B-A3B、Kimi-K2.6、Kimi-K2.7-Code では表示されない事を確認)。この辺りは利用するうえで各自で再度確認した方がよいでしょう。

Qwen3-0.6B-cpu

  • 開発元: Alibaba
  • 用途: 軽量な処理
  • 総パラメータ数: 0.6B
  • アクティブパラメータ数: 同一 (denseモデル)
  • コンテキスト長: 32K
  • マルチモーダル入力: ×
  • 思考: ×
  • 利用コスト: 超低 (Input: 0.01円 / Output: 0.03円)

サイズの小さな超低コストモデルです。分類や簡単なルールでのテキスト整形、大量データの処理などに向いているモデルです。動作確認を行い、目的が達成できそうであれば利用コストをかなり低く抑える事が出来ます。

なお、Qwen3系モデルは本来思考モードを持ちますが、思考モードを設定する "chat_template_kwargs": {"enable_thinking": true} を設定しても思考は有効にならない事を動作確認上で確認しています。

名前の通り、GPUではなくCPUで動作しています。

Phi-4-mini-instruct-cpu

  • 開発元: Microsoft
  • 用途: 軽量な処理
  • 総パラメータ数: 3.8B
  • アクティブパラメータ数: 同一 (denseモデル)
  • コンテキスト長: 128K
  • マルチモーダル入力: ×
  • 思考: ×
  • 利用コスト: 超低 (Input: 0.01円 / Output: 0.03円)

「Qwen3-0.6B-cpu」と同様、こちらもCPUで動作する超低コストモデルです。HuggingFace上では同等規模のモデルの中では数学と論理思考能力が高いことを謳っています。軽量な処理向けで、動作確認を行い、目的が達成できそうであれば利用コストをかなり低く抑える事が出来ます。

言語(自然言語)やプログラミング言語ごとに性能の差異がある事が述べられており、それらの影響を受けそうかは確認しておいた方がよいでしょう。

Qwen3-VL-30B-A3B-Instruct

  • 開発元: Alibaba
  • 用途: ビジョン処理
  • 総パラメータ数: 30B
  • アクティブパラメータ数: 3B
  • コンテキスト長: 256K
  • マルチモーダル入力: 〇
  • 思考: ×
  • 利用コスト: 低 (Input: 0.1円 / Output: 0.3円)

画像や動画の理解、テキスト読み取り(OCR)、それらを元にした生成などに強いと謳うモデルです。そのような用途であれば効果を発揮する可能性が有ります。

Kimi-K2.6

  • 開発元: Moonshot AI
  • 用途: 長時間のコーディングタスクやエージェント処理などに強み
  • 総パラメータ数: 約1T
  • アクティブパラメータ数: 32B
  • コンテキスト長: 256K
  • マルチモーダル入力: 〇
  • 思考: 〇
  • 利用コスト: 高 (Input: 0.6円 / Output: 3円)

長時間のコーディングタスクや、多数のエージェント動作への強みを謳うモデルです。開発用途で効果を発揮する可能性が有ります。また、ドキュメント理解や画像の理解にも最適です。

思考を行うモデルであり、思考モードを切り替える事が出来ます。切り替える際にはOpenAI系の指定である reasoning effort ではなく chat_template_kwargs: {"thinking": false} を指定する事で思考モードをオフにすることができます。

利用コストは他のモデルよりも高めです。また、実際に試してみたうえでのレスポンスも、思考モードが有効な場合は遅い傾向にあります。

また、Kimi系モデルはアクティブユーザー数や月間売り上げが関係してくるライセンス要件を含みます。先述のライセンス一覧ページをご確認ください。

Qwen3.6-35B-A3B

  • 開発元: Alibaba
  • 用途: 汎用
  • 総パラメータ数: 35B
  • アクティブパラメータ数: 3B
  • コンテキスト長: 256K
  • マルチモーダル入力: 〇
  • 思考: 〇
  • 利用コスト: 中 (Input: 0.3円 / Output: 1.5円)

汎用的に利用可能なモデルです。公式ではエージェントコーディング性能の向上と、より大きなモデルに匹敵する事がアピールされています。

思考モードの有効無効はOpenAI系の reasoning effort ではなく chat_template_kwargs: {"enable_thinking": false} で指定する必要が有ります。

gemma-4-31B-it

  • 開発元: Google DeepMind
  • 用途: 汎用
  • 総パラメータ数: 31B
  • アクティブパラメータ数: 同一 (denseモデル)
  • コンテキスト長: 256K
  • マルチモーダル入力: 〇
  • 思考: 〇 ※デフォルトではオフ
  • 利用コスト: 中 (Input: 0.24円 / Output: 0.96円)

中規模モデルです。多言語、画像の理解、長い文脈、エージェント機能を1モデルで広くカバーする汎用性の高いモデルです。

他の思考モデルと異なる点として、思考モードがデフォルトではオフになっているようです。"chat_template_kwargs": {"enable_thinking": true} を指定することで思考を行った回答が返って来る事を確認しています。

なお、gemma-4 には 26B A4B というMoEモデルも有りますが、本モデルは dense モデルになっています。

Kimi-K2.7-Code

  • 開発元: Moonshot AI
  • 用途: コーディング
  • 総パラメータ数: 約1T
  • アクティブパラメータ数: 32B
  • コンテキスト長: 256K
  • マルチモーダル入力: 〇
  • 思考: 〇
  • 利用コスト: 高 (Input: 0.52円 / Output: 5.04円)

コーディングに特化したモデルです。エージェントを用いたコーディングに最適なモデルです。

なお、思考を行うモデルですが、K2.6 とは異なり、chat_template_kwargs: {"thinking": false} を設定しても思考を無効化する事は出来ません。この設定値に false を設定しても思考中のテキスト内容が回答に混入する事が確認できています。

利用コストは他のモデルよりも高くなっています。

また、Kimi系モデルはアクティブユーザー数や月間売り上げが関係してくるライセンス要件を含みます。先述のライセンス一覧ページをご確認ください。

では、どう選ぶか?

まず試すのであれば、パブリックモデルであり性能的にも汎用的に扱いやすい「gpt-oss-120b」から試していただくのが良いかと思います。

そのうえで、軽量な処理を大量データに対して適用するのであればCPUで動作する超軽量モデル、画像を扱うなら Qwen3-VL や gemma-4、より高性能なエージェントコーディングを目的とするなら Kimi-K2.7-Code、国産にこだわるなら llm-jp や、さらに商用利用前提で申請可能であれば PLaMo 3.0 Prime や cotomi v3、といった方向で試していけば良いのではないでしょうか。

また、やはり用途によって性能が変わる部分も大きく、さくらのAI Engineには画面上で複数モデルを試すことができる機能「Playground」があるため、それも利用してみるとより比較がしやすいかと思います。

参考

この記事を書いた人

yu-kinjo

ネットアシスト開発部の yu-kinjo です。

【取得資格】

・さくらのクラウド検定

・AWS Certified Solutions Architect - Associate

・AWS Certified AI Practitioner

・Oracle 認定Javaプログラマ SE6

・JSTQB テスト技術者資格 ファンデーションレベル

・CIW (Certified Internet Webprofessional) ファンデーション

・XML技術者育成推進委員会 XMLマスター ベーシックV2

・基本情報処理技術者

・初級システムアドミニストレータ